世界のローカル商品「台湾産豆乳」

 台湾はフォルモサ(麗しの島)とも呼ばれています。緑にあふれた美しい風景と多種多様な地形に恵まれ、年中温暖な気候のなか、一年を通して様々な農産物が育ちます。MUJI Taiwanは、2004年の設立以来、台湾の皆様に愛され、現在57店舗を展開しています。MUJI Taiwanは、取り組みの1つとして、台湾内で昔から愛されている商品を見つけて「無印良品」の店舗で販売し、多くの人々にその商品の良さを伝える活動、「良品市場」を行っています。2020年12月にスタートし、現在は100種類以上の商品が28店舗で販売されています。蜂蜜やお茶、麺類、大豆食品、産地直送の新鮮な野菜や果物、それらを原料にした加工食品などを取り扱っています。今回は、「良品市場」の人気No.1商品であり、台湾人の朝食の定番でもある豆乳を紹介します。良品市場には、一部に生産者の方との共同開発商品もあり、この豆乳は共同開発の商品です。
※「良品市場」HP(中国語): https://www.muji.com/tw/muji-market/index.html

<無印良品 美麗華百樂園の「良品市場」>

 
 
■「良品市場」の大人気商品:台湾産豆乳
●台湾産大豆で作った豆乳
 「良品市場」の人気No.1商品の台湾産豆乳は、2021年10月に販売を開始しました。台湾産大豆で作られた濃厚で栄養満点の豆乳です。台湾内で豆乳に加工されているため新鮮で、生産履歴(大豆の品種や産地、生産者の情報、栽培記録、加工工程などすべての情報)も開示されており安心とのことで、たくさんのお客様から支持をいただいています。無糖と微糖の二種類があり、防腐剤、乳化剤を一切使わず、大豆本来のおいしさを味わえます。「良品市場」28店舗で1本200ml、35元(約160円)で販売しています。スーパーなどで販売している豆乳の価格の3~4倍しますが、約8カ月で販売数量約9万本を販売。売り上げも販売量も、現在「良品市場」で人気No.1の商品です。

●きっかけは新店オープン
 台湾産豆乳の開発は、2021年10月に新北市永和(ヨンホー)区にあるMUJI BEYOND PLAZAのリニューアルオープンがきっかけでした。永和は、台湾内で販売されている豆乳の商品名に「永和」が使われるなど豆乳が有名であったことから豆乳を使った商品を開発できないか検討を開始しました。その頃、台湾政府が主催するセミナーで知り合ったスマート農業と専門機械で大豆を栽培している「大人物農産運輸販売合作社(組合)」の方と意気投合。すぐにでも新鮮なものを台北のお客様に届けたいと熱く賛同してくれました。

<右:「大人物農産運輸販売合作社」の代表 陳建瑋(チェン)さん>

 
 
●台湾産大豆の現状
 台湾では、2015年より、稲作から大豆など雑穀類作物への転作が推奨されています。長い間稲作が続いた田んぼは、地下水の過剰揚水により地盤沈下の恐れがあるためです。推奨されている雑穀類の中でも大豆は、空気中の窒素分子を作物の肥料となる窒素化合物に変えることができるうえ、窒素固定の効果があるため米と輪作で作ると土地生産性が上がり、水の使用量も抑えられるそうです。
しかし、台湾では輸入大豆の価格が安いことなどから台湾産大豆の消費率が高くありません。そのため、大豆生産者が収入や販売に困らず、栽培や品質改良に専念できるよう「大人物農産運輸販売合作社(組合)」では大豆を決まった価格で購入しています。これにより、高品質な大豆、豆乳の生産ができるのです。MUJI Taiwanは高品質な台湾産大豆の商品を生産・販売することで、販売チャネルを広げ、消費拡大に貢献しています。現在、ホームページや店頭、外部広告などで台湾産大豆の良さと生産者の努力を伝える活動を行うことや、消費者と生産者をつなげるきっかけ作りも行っています。

●商品のこだわり:安心安全な豆乳を届けたい
 台湾の上質な大豆から作られた豆乳は、遺伝子組み換えをしていない大豆から作られ、残留農薬がなく、乳化剤や防腐剤を使用していません。MUJI Taiwanでは、大人も子供も安心して飲める大豆製品をお客様に提供したいという思いを持った生産者と協力することで、自信を持って「遺伝子組換えなし、残留農薬なし」と、商品のパッケージに記載してお客様の安心につなげています。
 また、容器は「無印良品」のものづくりの考え方の一つでもある「包装の簡略化」に基づき、リサイクル率の高いガラス瓶を採用しました。ガラス瓶は、プラスチック使用削減に加えて、再利用する過程で汚染や環境への負担が比較的少ない素材でもあります。

<左:豆乳を開発したMUJI Taiwan本部コミュニティマネージャー徐恒琦(シュー)さん  右:大豆の契約栽培生産班の班長 林木東(リン)さん>

 
 
●販売ルートの拡大
 MUJI BEYOND PLAZAのリニューアルオープンと同時に、新北市永和区にある小学校や幼稚園の給食としての提供も開始しました。台湾では遺伝子組換え大豆を使った豆乳は学校給食で禁止されており、生産履歴が確認できる台湾産豆乳の提供を推奨されていることから、MUJI Taiwanの豆乳が導入されました。先生たちからも台湾産大豆の良さやそのわけを子供たちに伝えています。
 豆乳のほかにも、昔ながらの製法で作られた黒豆醤油や、香ばしくてサクサクとした食感を楽しめる手焼き豆せんべいなど、台湾産大豆を使った関連商品を他社から仕入れ、豊富に取り揃えています。中でも黒豆醤油は、歴史が長く丸大豆や丸黒豆を昔ながらの手法で発酵。120日間かけて熟成させて作り上げた深いうまみのある醤油を仕入れて店頭で販売しています。
 また、老舗菓子店と協力して豆乳ビスケットの開発も進めており、今秋発売する予定です。

●今後の目標
 豆乳の販売量拡大により、生産者の大豆栽培面積も拡大しています。その結果、MUJI Taiwanの農業や農産品の消費拡大への取り組みは行政機関にも評価いただくこととなりました。MUJI Taiwanの担当者らは「今後も「良品市場」の成功から得たアイディアやヒントを地域MD開発に活かしていきます。そして皆様のくらしの基本になるような商品をより多く開発し、台湾に住む全ての方々の生活を支えていきたい」と話しています。