
無印良品の家具や収納用品、店舗の什器など、私たちの身近なところで使われている木材。その木は、どこで育ち、どのような道のりを経て、商品や店舗へと届いているのでしょうか。
木材を使い続けていくためには、森林や生物多様性を守ることはもちろん、生産地で働く人や地域との関わりにも目を向ける必要があります。良品計画では、木材の原産地や調達経路を確認するとともに、実際に産地へ足を運び、自分たちの目で現場を確かめています。
さらに、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース )の枠組みを活用し、自然との関わりや、将来起こり得るリスクと機会についても分析しました。そこから見えてきたのは、木材調達に伴う課題だけではありません。国産材や未利用材の活用など、森や地域、そしてこれからのものづくりにつながる新たな可能性も見えてきました。 この記事では、木材の産地をだどりながら、良品計画が考えるこれからの木材調達について紹介します。
良品計画は、綿、木材・紙、パーム油、コーヒーの5つを重要原材料として位置づけています。その中でも木材は、家具や収納用品などの生活雑貨商品、さらには店舗の内外装や什器、住宅事業「MUJI HOUSE」など幅広く使用されており、無印良品の商品やサービスに関わる重要な原材料です。一方、木材の生産地では違法伐採や森林減少、人権侵害などの課題が世界的に指摘されています。そのため企業には、木材がどこで生産され、どのような経路を通って届けられているのかを把握し、適切に管理することが求められています。
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こうした課題に対応するため、良品計画は「木材・紙の調達ガイドライン」を定め、木材の調達状況を確認する取り組み(木材DD)を進めています。具体的には、木材の原産地や調達経路を確認しながら、違法伐採や森林減少、人権侵害などのリスクを特定・評価・低減するための取り組みを行っています。調達方針の策定からサプライヤーへの毎年の調査、リスクの特定と対応、情報開示までを継続的に行い、環境や人権に関するリスクの把握と改善に取り組んでいます。また木材を扱う複数の部門が連携しながら取り組むことで、調達管理の実効性向上につなげています。
さらに良品計画では、現在だけでなく将来にわたって持続可能な木材調達を続けていくために、TNFDの枠組みを活用した分析を行いました。木材DDがサプライチェーン上のリスク管理を担うのに対し、TNFDで推奨するシナリオ分析では、将来的にどのようなリスクや機会が考えられるのかを整理し、今後の方向性を検討することを目的としています。
良品計画は2025年に綿を対象として初めてTNFD開示を行い、2026年には木材を対象に分析を行いました。今回は、無印良品の家具やステーショナリ―などの生活雑貨で使用している木材を対象に、自然との関わりが特に深い造林および伐採の工程を評価しました。リスク評価については、主な調達先であり、森林減少や人権侵害などの課題が比較的高いと考えられる地域を対象としました。一方で、機会の評価については、未利用材の活用を推進している日本を対象としました。
その結果、EUDR(欧州森林破壊防止規則)などの規制強化によるトレーサビリティ対応の負荷やコストの増加、害虫被害による木材品質の低下や安定調達への影響などが重要なリスクとして見えてきました。
一方で、新たな事業機会も見えてきました。国産の未利用木材を活用した商品開発と、店舗什器へのSGEC認証材※の利用拡大です。こうした取り組みを通じて、持続可能な林業への貢献と商品・ブランドの価値向上につなげていきます。
TNFD 公式サイト:https://tnfd.global/
※SGEC(Sustainable Green Ecosystem Council) :一般社団法人 緑の循環認証会議による日本型森林認証制度
分析や調査だけでは、木材がどのような環境で生産され、どのように流通しているのかを十分に把握することはできません。そこで良品計画は、木材を調達し、製品を製造しているインドネシアで現地視察を実施しました。最終製品工場だけでなく原材料の調達段階までさかのぼりながら、木材の由来やトレーサビリティの状況、環境・人権への取り組みを確認しています。現地では、労働環境や安全衛生、強制労働や児童労働の有無などを確認するとともに、関係者との対話を通じて各工程の運用状況を確認しました。書類だけでは見えない現場の取り組みを直接確かめることで、木材が商品になるまでの流れや、生産地が抱える課題などサプライチェーンへの理解を深めています※。
※サプライチェーン上のすべての拠点ではなく、代表的な拠点から視察を行っています。
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現地で特に印象的だったのは、民家や農地の不要木・枝材、製材端材が資源として有効活用され、最終的に良品計画の商品へとつながっていたことです。こうした取り組みは、資源の有効活用や廃棄物削減だけでなく、農家の副収入や地域の雇用創出、地場産業の活性化にも寄与していました。今回の視察を通じて、木材調達は原材料の確保だけではなく、環境価値と社会価値の両方を創出する重要な取り組みであり、地域社会の持続可能な発展とも深く関わっていることを改めて認識しました。
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良品計画では以前から国産木材を積極的に活用してきました。今回の分析では、国産未利用材を活用した商品開発や、店舗什器への森林認証材の利用拡大を主な機会として整理しています。これらは持続可能な林業への貢献と、商品・ブランド価値の向上につながる可能性を持つ取り組みです。
また、2023年5月に農林水産省と「建築物木材利用促進協定」を締結し、5年間で合計10,000m3を目安に木材の活用を進めています。店舗では商品陳列用什器の棚板を国産材へ切り替えるほか、国産材を活用した法人向け家具の開発や、森林産業で発生する未利用材の商品化を進める「山のダイゴミプロジェクト」にも取り組んでいます。こうした活動を通じて、国産材の需要拡大、森林資源の循環利用、地域林業の活性化につなげています。


良品計画では、このように木材の原産地や調達経路を確認しながら、持続可能な木材調達に取り組んでいます。また、TNFD分析を通じて将来のリスクや機会を把握し、現地視察による実態確認も行っています。その中で見えてきた課題への対応を進めるとともに、国産材や未利用材の活用といった新たな可能性にも挑戦しています。これからも、森や地域社会とのつながりを大切にしながら、持続可能な木材調達とものづくりを進めていきます。
※「山の木っ端」 乾燥ウケグチ:https://www.ryohin-keikaku.jp/news/articles/2025_1113_01