― パーム油の産地マレーシア・サバ州を視察―

良品計画では、持続可能な原材料の調達を企業の責任と捉えています。なかでも綿、木材、紙、パーム油、コーヒーの5つの原料は、森林や生物多様性への潜在的な毀損リスクおよび良品計画の事業戦略上の重要性を踏まえ、重要原料と位置付けています。パーム油は、良品計画の化粧品、日用品、食品など幅広い商品に使用されている一方、生産地域における森林減少や生物多様性への影響、労働環境に関する課題が国際的に指摘されてきた原料でもあります。
良品計画は、持続可能なパーム油の調達を目指し、2025年12月に「パーム油の調達ガイドライン」を策定しました。そしてサプライチェーンの上流において、実際にどのような取り組みが行われているのかを適切に把握することが重要であると考え、良品計画の生産パートナーが調達先としているマレーシア・サバ州のパーム農園および搾油(ミル)工場の現地視察を2026年3月末に実施しました。

対話の様子
本視察の目的は、単に「問題がないか」を確認することではありません。
農園や工場では、日々の運営の中でどのように環境や人権への配慮が行われているのか。国際的に知られるRSPO認証※1や各種方針は、現場でどのように理解され、どの程度日常の業務に反映されているのか。また、農園の規模や経営形態の違いによって生まれる差はあるのか、課題は何か。などを知るために現地視察では、現場を見て、関係者と対話することを重視しました。
※1Roundtable on Sustainable Palm Oil(持続可能なパーム油のための円卓会議)の略称。環境や人権に配慮して生産されたパーム油の国際的な認証制度
訪問した比較的規模の大きな農園および搾油工場では、環境への影響を把握・低減するための取り組みが、日常の運営の中に組み込まれている様子を確認しました。
例えば、農園周辺で森林破壊が起きていないかを確認するため、現地巡回に加え、衛星画像を用いたモニタリングが行われており、土地利用の変化を定期的に把握する仕組みが整えられていました。現場管理と遠隔監視を組み合わせることで、広大な農園を継続的に管理している点が特徴的でした。
また、パームの実を食べてしまうネズミへの対策として、農薬に頼るのではなく、天敵であるフクロウを活用する生物学的な防除が行われていました。生態系の一部として害獣対策を行う取り組みで、環境配慮と実務の両立を意識した運営の一例といえます。
さらに搾油工場では、工場排水を適切に処理してパームツリーの栽培に再利用したり、工場で発生するメタンガスは発電に再利用するなど資源の有効活用が実践されていました。
灌漑

フクロウの研究所
今回視察した農園では、森林破壊や泥炭地開発、搾取を行わないことを基本とするNDPE方針※2が掲げられており、その考え方は、大規模農園だけでなく、取引関係にある小規模農家との契約においても前提とされていることを確認しました。
農園の規模や経営環境に違いはあるものの、サプライチェーン全体として一定の方向性を共有しようとする姿勢は、リスク低減の観点から重要な要素であると認識しています。
※2森林破壊ゼロ(No Deforestation)、泥炭地開発ゼロ(No Peat)、搾取ゼロ(No Exploitation)の頭文字をとった持続可能な調達基準
労働安全の面では、作業内容に応じた防護服が従業員に提供されており、農薬や肥料についても専用の保管庫で一元管理されていました。設備だけでなく、取り扱いのルールが定められていること、また従業員に対して定期的な健康診断が実施されていることも確認しました。また、農園で働く方の中には、インドネシアなどマレーシア以外の地域から家族連れで来ている労働者も多くいます。マレーシアでは外国籍の子どもが公立学校に通えない制度的な背景があることから、農園内に学校を設立し、労働者の子どもたちが17歳まで通える環境が整えられています。さらには農園内に診療所も併設されており、医療へのアクセスも整備されていました。
こうした取り組みから、訪問したパーム農園では、労働の場としてだけでなく、生活の基盤としての側面も含めて運営が考えられている様子がうかがえました。

従業員の住居
一方で、小規模農家に訪問した際は、管理体制や取り組みの水準にばらつきが見られました。労働条件や安全対策に関する運用が十分に整理されていないケースや、制度や方針に対する理解が限定的な場面も確認しました。
これらは個々の小規模農家の姿勢だけでなく、資金的制約や、情報へのアクセスが限定されてしまうといった構造的要因があると考えられます。良品計画が環境や人権への配慮を進めていくうえでは、こうした現場の実情を踏まえた関わり方や支援の在り方も踏まえて取り組むことが重要です。
今回の視察を通じて、パーム油のサプライチェーンにおける透明性を向上するうえでは、アンケートや認証の有無だけではなく、現場での運用実態や改善に向けた姿勢を継続的に確認していくことの重要性を再認識しました。今回の視察先においてはトレーサビリティについても、農園や工場単位で原料の流れを把握できる基盤は一定程度存在していました。現地で対話を行うことで、リスクの把握や改善に向けた取り組みの検討につなげていくことが重要だと考えています。
良品計画では、今回の視察を通じて得られた知見を踏まえ、良品計画の持続可能なパーム油調達において、重視すべき観点や生産パートナーに求めるべき考え方について検討を進めていきます。国際的な認証制度についても、その役割や位置づけを含め、実効性の観点から引き続き検討していく方針です。
また原材料の持続可能な調達は、一度の現地確認で完結するものではありません。
良品計画は今後も、サプライチェーンの上流に目を向け、現地での確認と対話を重ねながら、環境・人権に配慮した調達の在り方を模索し続けていきます。