
2026年7月上旬の2日間、社内向けのイベントとして、群馬県の無印良品カンパーニャ嬬恋キャンプ場において、「ESG探求キャンプ -食-」を開催しました。全国の店舗・本部から集まった約30名の従業員が参加し、持続可能な食をテーマに学びと対話を深めました。
今年で3年目となるESG探求キャンプの今回のテーマは「食」です。食料危機やフードロス、生活習慣病といった社会課題が世界的な関心を集めるなか、私たちの暮らしを支える「食」は、ESGの推進に取り組むうえでも欠かせないテーマです。今回の企画では、知識を学ぶだけではなく、地域で育まれる食と暮らしに実際に触れ、仲間との対話を重ねながら、「本業としてのESG」を自分自身の言葉で捉え直すことを重視しました。


キャンプ初日、参加者は嬬恋村のキャベツ畑を訪れ、地元のキャベツ生産者から地域農業の現状や課題についてお話を伺いました。日本有数の高原野菜産地として知られる嬬恋村では、キャベツは地域経済や暮らしを支える重要な産業です。しかし生産者のお話によると、近年は、世界情勢の変化による燃料費や資材費等の高騰が続く一方で、農産物の販売価格は上昇しておらず、収益確保が難しい状況が続いています。そのため多くの農家は国の補助制度も活用しながらなんとか経営を続けているという現実が共有されました。また、後継者不足も大きな課題です。農業を続けられなくなった農家が土地を手放し、残った農家が土地を引き継ぎながら規模を拡大している一方で、必ずしも収益性が高まるわけではなく、薄利多売の構造に直面していることを知りました。さらに、気候変動の影響によって以前より気温が高くなり、収穫時期や栽培スケジュールの見直しが必要になっているなど、生産現場ではさまざまな変化への対応が求められています。参加者は、普段店頭で目にするキャベツの背景に、こうした社会課題や経営上の努力があることを学びました。

今回のキャンプでは、毎食、無印良品の飲食事業「Café&Meal MUJI」の担当者が食事を用意しました。これは単なる食事提供ではなく、無印良品の飲食事業がどのような価値観で食材を選び、地域や社会と関わりながら事業を展開しているのかを知るためのプログラムの1つです。参加者は料理を味わいながら、その背景にある生産者の思いや地域資源、環境・社会課題とのつながりについて学びました。

提供されたメニューには、地域資源の活用や環境・社会への配慮という視点が随所に盛り込まれていました。たとえば、夕食のロールキャベツに使用された「鎌倉海藻ポーク」は、海岸に漂着した海藻を障害のある方が回収・加工し、豚の飼料として活用しています。また、ハンバーグには乳牛としての役割を終えた経産牛を使用しました。一般的には価値が低く見られがちな経産牛を活用することは、酪農資源を無駄なく生かし、持続可能な畜産にもつながります。さらに、デザートには規格外りんごを活用したヨーグルトピンサを提供するなど、こうした食材を通じて、参加者は生産者や地域、食材の価値を最後まで生かそうとする無印良品の飲食事業の考え方に触れました。
また、2日目の朝にはコーヒーワークショップを実施しました。参加者はコーヒー豆がブレンドされた無印良品で販売されているコーヒーとシングルオリジンのコーヒーを飲み比べながら、味や香りの違いを楽しむだけでなく、実際に食品部のメンバーが訪れたブラジルのコーヒー農園の現地レポートを通じて、コーヒー豆の調達におけるサプライチェーンや持続可能な取り組みについて学びました。世界のコーヒー消費量が増加する一方で、気候変動や病害虫の影響により、2050年にはコーヒー豆生産量の約6割を占めるアラビカ種の栽培適地が半減すると予測されています。そのような課題に対し、無印良品では、森林や生態系などの自然環境の保護と農園労働者の人権尊重・生活向上の両立に取り組むブラジルのダテーラ農園とともに商品を開発しました。現地の選別工程でサイズなどの観点から規格から外れて輸出されていなかったコーヒー豆を活用し、資源を無駄なく生かす取り組みを行っています。参加者は、コーヒーを単なる商品として捉えるのではなく、その背景にある生産現場や社会課題に目を向け、生産者の暮らしや地域の未来につながる選択肢を模索することの重要性を学びました。
夜は、焚火を囲みながらテーマごとに語り合う座談会が行われました。座談会終了後も話し込む参加者がいるほど盛況で、部署や役職の垣根を越えて本音で語り合うなかで、普段は共有する機会の少ない思いや考えを率直に交わすことができました。参加者は地域食材や商品開発、キャンプ場から考える無印良品の価値、そして未来の無印良品について対話を重ね、それぞれの立場から未来への思いを共有しました。
対話のなかでは、日本各地の食文化や地域資源を次世代へつないでいくことの重要性や、商品の背景にあるストーリーをお客さまへ届けることの大切さが語られました。また、未来の無印良品を考える中では、障がいのある社員を含め、一人ひとりが自分らしいキャリアを描ける会社であってほしいという声も上がり、多様な人財が活躍できる環境づくりの重要性をあらためて確認する機会となりました。

2日目は、「無印良品・良品計画の価値(良さ)とは何か」「その価値をさらに大きくするために何ができるか」をテーマに、グループごとに議論を行いました。多くのグループに共通していたのは、商品や店舗そのものだけでなく、そこに関わる人の思いや企業理念、社会や未来に向けた視点こそが無印良品の価値であるという認識です。また、その価値をさらに広げていくためには、部署や立場を超えた対話を続けること、事業や商品の背景にあるストーリーを社内外へ発信すること、そして今回得た学びをそれぞれの現場で共有し、実践していくことが重要だという意見が発表されました。

イベントの終わりには、本企画の責任者から「この商品はなぜ生まれたのか」「なぜこの取り組みを続けているのか」という問いを持ち続けてほしいというメッセージが送られました。参加者からは「ESGについて自分ごととして理解できた」「生産者や商品開発担当者の思いを知り、事業やお店とESGのつながりを実感した」といった声が寄せられました。また、「店舗に持ち帰って学びを伝えたい」「お客さまへ商品の価値や背景を伝えたい」という声も多く、ESG経営への理解が行動意欲へとつながったことがうかがえます。さらに、「全国の仲間と深く話すことができた」「同じ志を持つ仲間がいることを知り励みになった」「無印良品で働く意義をあらためて感じた」といった感想も数多く寄せられました。参加者への事後アンケートでは、企画全体に対して、多くの参加者が「期待値を超えた」「大きく期待値を超えた」と回答しており、参加後にはESG経営への理解度は5段階中3.90点から4.67点(0.76増)、食事業に関する理解度は3.14点から4.53点(1.39増)と向上しました。本企画はESG経営への理解促進に加え、従業員同士のつながりや会社へのエンゲージメント向上にもつながる機会となりました。