気候変動への対応

2025年9月、良品計画は株式会社JERAとともに、「合同会社MUJI ENERGY」を設立し、発電事業を立ち上げました。これは、2030年度までに、2021年に比べてCO2排出量(スコープ1,2※1)を50%削減するという目標に、本気で向き合うための新たな挑戦です。なぜ、エネルギーを“自分たちの手でつくる”ことを選択したのか。その背景にある、良品計画らしい思いをご紹介します。
※1 スコープ1とは自社におけるCO2の直接排出、スコープ2とは自社が購入・使用した電力、熱、蒸気などのエネルギー起源のCO2の間接排出のことを指します。
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良品計画はCO2排出量削減のため、これまでに無印良品の単独店の屋根27店舗(2025年8月現在)に太陽光発電設備を設置しています。また各店舗での日々の省エネ努力も行ってきました。
しかし、全店舗の8割を占めるテナント型店舗では、太陽光発電設備の設置や再エネ電力への切り替えが構造的に難しいのが現実。全国各地へ新規出店を進める中、CO2排出量削減の“限界”が来ていました。
その“限界”を超え、店舗数の拡大という企業の成長と、CO2排出量の削減という責任を、両立させるための“次の一手”が必要でした。
CO2の削減には、非化石証書の購入やV-PPA(仮想電力購入契約)※2など、さまざまな手段があります。しかし、その裏で太陽光設備の設置等のために森林伐採などの環境破壊や地域の景観が毀損されている例もあります。
大量生産・大量消費社会へのアンチテーゼとして生まれた良品計画は、「感じ良い暮らしと社会」の実現に貢献することを企業理念に掲げてきました。だからこそ、電気をつくる工程全体に責任を持ち、発電所の設置現場を自らの目で確かめ、環境や景観に配慮した形で、電力を作り出しCO2削減に取り組みたい。この思いのもと、自分たちの手による発電事業へのチャレンジがはじまりました。
※2 V-PPA(バーチャル PPA)とは特定の発電所と“仮想的に”契約し、再エネを使用したとみなされる仕組みのことを指します。
MUJI ENERGYでは、太陽光で発電した電気は第三者に販売し、同時にうまれる「環境価値(CO2を排出しない電気であるという価値)」を株式会社JERA Cross経由で良品計画が取得(買取)します。この仕組みにより、年間8,000トンのCO2が削減される見込みです。
小売企業が「発電事業+V-PPA」のスキームで、再生可能エネルギーと環境価値の創出に本格的に取り組むのは、日本初となります。良品計画ならではの思いと、その思いに共感し、ともに新しいチャレンジをしてくれた株式会社JERAと株式会社JERA Crossの熱意により、「どうつくられた電気か」にまで責任を持つことができる、日本初の取り組みに踏み出すことができました。


発電方法に選んだのは、1基あたり50kw程度の小型太陽光パネル。メガソーラーの20分の1以下の規模で、大きさはテニスコート2面分ほどです。この小型のパネルを、全国約250箇所に分散して設置することで、1年間で13MW規模の太陽光発電設備を開発していきます。
なぜ、「小型パネル×250箇所」にこだわったのか?そこには、“大規模に効率的に発電する”よりも、“手間がかかっても地域社会や自然と共生できる形”を優先したいという“わけ”があります。
太陽光パネルの設置候補地は、全て良品計画の社員が訪問し、「森林伐採や大規模造成は行わない」ことに加え、「住宅密集地ではない」こと、「景観や生態系への影響が最小限に抑えられている」ことなど、独自の評価基準で厳しく確認しています。地域住民や環境への影響を自分たちの目で多角的に確認することで、「脱炭素のために環境を壊す」という矛盾が生まれていないか、担当者が一箇所一箇所こだわっています。
また、「太陽光発電設備調達ガイドライン」を定め、「設備の製造において強制労働などの人権侵害がない」こと、また「設備の使用後にリサイクルまたは適正処理が可能な素材や機器を使用する」ことを、方針に掲げています。設備の製造から使用後まで、ライフサイクル全体にわたり、社会や環境への配慮に責任をもつことが良品計画の譲れない姿勢です。
「2030年度までにCO2排出量(スコープ1,2)を50%削減」という目標の中核を担うことになる発電事業。
初年度は、13MW規模の発電設備の開発からスタートします。これにより生み出される電力は、無印良品の店舗で1年間に使用する電力量の約20%にあたり、CO2に換算すると年間8,000トンが削減される見込みです。ただし、目標数値だけを追い求めて環境や地域の方に負担を強いることはしたくありません。そのため、MUJI ENERGYでは耕作放棄地の活用だけでなく、農業や酪農などと太陽光発電の組み合わせなど、一次産業との連携も検討しています。
店舗への太陽光発電設備や再エネメニューの導入、省エネの努力、そして“電気を自分たちでつくる”新しい挑戦など、さまざまな可能性を排除せずに、良品計画らしい目標達成を目指します。
電気をつくる工程全体に責任をもち、現場を自らの目で確かめ、環境や景観に配慮した良品計画らしい形での発電事業に取り組み、脱炭素社会に貢献していきます。