
2026年3月、良品計画は事業環境および経営環境の変化を踏まえ、「重要課題(マテリアリティ)」を見直しました。重要課題とは、中長期的な事業成長および企業価値の向上と、持続可能な社会の実現のために優先的に取り組む課題です。
良品計画では、重要課題を成長戦略と直結するものとして位置づけており、その根幹には、企業理念『「人と自然とモノの望ましい関係と心豊かな人間社会」を考えた商品、サービス、店舗、活動を通じて、「感じ良い暮らしと社会」の実現に貢献する』があります。
この企業理念のもと、重要課題は日々の事業活動がどのように社会課題につながっているのかを確認し、迷ったときに立ち返るための「羅針盤」のような役割を果たしています。社員一人ひとりが同じ方向を向き、事業を通じて社会に価値を提供し続けるための共通言語でもあります。
良品計画では2022年に初めて重要課題(マテリアリティ)を設定し、そこから約4年間にわたり重要課題に沿ってさまざまな取り組みを推進してきました。その間、気候変動への対応要請の高まりや、サプライチェーンをめぐるリスクの顕在化、グローバル展開の進展などにより、事業環境・経営環境は大きく変化してきたことから、重要課題をあらためて見直す必要性が高まりました。
重要課題の特定にあたっては、まずSASBスタンダードおよびCSRDトピック等、サステナビリティ情報開示に関する国際的なガイドラインを参考に、課題を幅広く抽出しました。そのうえで、抽出した課題について、「良品計画にとっての重要度」と「ステークホルダーにとっての重要度」の両面から評価を行い、優先順位を設定しています。さらに、社外有識者との意見交換において、良品計画のESG経営推進に関していただいた意見も参考にしながら整理を進めました。これらの検討結果を踏まえ、経営執行会議および取締役会において新しい重要課題の妥当性を審議し、決定しています。
今回の見直しでは、これまでの取り組みの方向性を維持しつつ、よりわかりやすく整理することを重視しました。社外有識者と社内取締役による意見交換では、これまで良品計画が進めてきたESGの取り組みについて一定の評価をいただきましたが、一方で、重要課題の表現が独特で、社内外にとってわかりにくいとの指摘も受けました。
こうした社外の専門家の視点を踏まえ、社長や役員との協議を重ね、事業実態や経営課題を反映した検討を進めました。これらの社内外の視点を踏まえた合意形成のプロセスを経て、社員が日々の業務に落とし込みやすい、わかりやすい重要課題として再整理しました。

再整理の結果、5つの重要課題を特定しています。「重要課題1. 社会・自然環境に配慮した商品・サービスの提供」では、再生材や環境負荷の低い素材を活用した商品開発を進めています。「重要課題2. 気候変動への対応と資源循環の推進」に関しては、再生可能エネルギーによる発電事業(MUJI Energy)、「ReMUJI」を通じたリユース・リサイクルの取り組みなど、循環を前提とした事業の構築を進めています。また、「重要課題3.地域への良いインパクトの実現」では、店舗を起点とした地域イベントの開催や地域と共創する活動を通じて、コミュニティづくりに貢献しています。さらにサプライチェーン管理の強化や人財施策の推進を通じ、「重要課題4. 誠実で倫理的な事業活動の保証」や「重要課題5. 多様な個人が主役となる公益人本主義の実現」にも取り組んでいます。
重要課題に沿って、ESG推進状況を把握するための独自指標を設定しています。例えば、「重要課題1.社会・自然環境に配慮した商品・サービスの提供」においては、「環境や社会、動物福祉に配慮した倫理的な意味を持つ繊維素材の調達比率」をひとつの指標として掲げており、2025年8月期では、衣服・雑貨部門の商品における環境や社会に配慮された綿は99%調達しています。「重要課題2.気候変動への対応と資源循環の推進」においては、CO₂排出量(スコープ1・2)を指標として設定し、事業活動に伴うCO2排出量の削減状況を継続的に把握しています。「重要課題3.地域への良いインパクトの実現」では、地域イベント数や参加人数を用い、店舗を起点とした地域との関わりや取り組みの広がりを確認しています。また、サプライチェーンに関わる「重要課題5.誠実で倫理的な事業活動の保証」では、工場監査結果を通じて、人権や品質、安全面での対応状況を確認しています。そして、「重要課題5.多様な個人が主役となる公益人本主義の実現」に関しては、女性管理職比率を重要な指標の一つとし、人財の多様性や組織づくりの進捗を測っているほか、個人株主数を企業活動への共感や信頼の広がりを示す指標として位置づけています。
良品計画で掲げている独自指標はこれらにとどまらず、統合報告書「MUJI REPORT 」やWEBサイトに掲載しているESGデータブックにおいて開示されており、環境・社会・ガバナンスの各側面から取り組みの進捗を可視化する役割を果たしています。成果を定量的に示すことで、ステークホルダーとの対話を深め、次の改善や取り組みにつなげています。

重要課題への対応は、一部の部門だけで進めるものではありません。商品開発、店舗運営、取引先との協働など、日々の業務そのものが重要課題の進捗につながっています。良品計画は、ESG経営を本業と位置づけ、事業活動を通じて「感じ良い暮らしと社会」の実現と持続的成長の両立を目指しています。